重陽の節供

重陽の節供

9月9日は「重陽」と呼ばれる長寿を願う節供です。

菊の花を飾り、菊花酒を飲んで長寿を願います

日本で「重陽が登場する最も古い記録は、『日本書紀』の天武天皇の時代の685年だといわれています。もともと中国では、菊が長寿に効く薬花と考えられており、「翁草(おきなくさ)」「千代見草(ちよみくさ)」などとも呼ばれて食されていました。それが日本に伝わり、宮中では王侯貴族が9月9日に菊を鑑賞し、菊の花びらを浮かべた菊酒を楽しむ「菊の宴」を催すようになりました。

重陽こそ、最も重要視されていました

江戸時代、「重陽」は五節供を締めくくる節供として、庶民の間でも盛んに行われていました。菊の花びらを浮かべた「菊酒」をくみ交わしたり、菊の花見に出かけたり。江戸時代は園芸が盛んだったこともあり、「菊合わせ」というコンクールなどもあちこちで開かれました。

菊の花でアンチエイジング
紫式部もしていた「菊被綿(きくのきせわた)」
節供の前日から菊の花を真綿で巻いて、香りの移ったその綿に露を含ませる―「着綿」とも「被綿」とも書かれる優雅な風習は、じつは菊の持つ薬効を美容と不老長寿に生かそうとする実用的なものでもありました。食用菊にはグルタチオンという抗酸化物質やクロロゲン酸というポリフェノールが含まれていて、アンチエイジングの効用があるのです。食中毒の予防にもなるともいわれ、紫式部も、着綿で身を清めると若返る、と信じていました。
 
紫式部
紫式部
菊は食中毒の予防にも
菊は食中毒の予防にも

不老長寿、アンチエイジングの菊の花を召し上がれ!

中国には、菊の花園を流れる川の下流で、菊花が漬かった水を飲んで長寿になったという伝説があります。日本でも能に、菊の露の霊水で不老不死を得た「枕慈童」という曲があります。「菊酒」の習慣は、室町時代に始まりました。パソコンやスマートフォンを見る時間が長くなり、眼精疲労に苦しむ現代人にも、菊の花は強い味方です。菊花茶や菊のおひたしなどに含まれるビタミンB1やビタミンEは目の疲れを癒してくれるのです。中国では「目の疲れには菊花茶」といわれるほど飲まれているようです。

天台宗の開祖ゆかりの坂本菊を滋賀県の名刹で
 
滋賀県大津市坂本にある西教寺では、重陽の節句会が催されるとともに、菊の盛りの11月には菊御膳料理が供されます要予約。料理に使われる坂本菊は、天台宗の開祖・最澄さんが日本に持ち帰ったとされる日本最古の食用菊。歴史を誇る地元だけに、なます、白和え、天ぷらなど菊の使い方も多様で、菊酒や菊香煎(菊のお茶)もいただけます。